【第6回】持続可能な仕組み作り

続けられる地域活動にするために

— 場所・費用・巻き込み、そして“仕組み”の工夫

音楽や文化活動を地域で展開していく中で、最初に直面する課題は「人手」ですが、その次に待ち構えているのが、場所・費用・運営の仕組みに関する問題です。

今回は、子どもたちにとって安心できる場を守りながら、運営側の負担が偏らず、活動を“続けていけるかたち”にするために、私たちNPO法人こどもゆめひろばが取り組んでいる工夫をご紹介します。


学校施設を借りるとき

音楽や合唱の活動にとって、学校の音楽室や視聴覚室はとてもありがたい場所ですが、施設をお借りする際にはセキュリティの問題もあります

保護者の方からも、「誰でも学校に出入りできるのは不安」という声があるため、次のような取り決めをしています:

  • 関係者には「名札ストラップ」の着用を徹底
  • 必要な部屋にだけ入室できる「限定キー」の設定を学校側と協議
  • 施錠管理のルール作り
  • 活動前後のチェック体制

こうした対応を丁寧に行うことで、学校側や地域からの信頼を築き、長期的な協力につなげています。


公民館などの会場を使うときは?

公民館などの公共施設を使う場合、会場費がネックになることもあります。
特に、定期的に活動する団体にとっては、積み重ねると大きな支出になります。

私たちは以下のような工夫で、費用負担を軽減しています:

  • 市町村の「登録団体」になることで利用料の減免を受ける
  • 他の団体と時間をシェアする

「場所の確保=お金がかかる」ではなく、知恵と協力で柔軟に乗り切る方法を地域と一緒に考えています。


イベントは“収益”ではなく“循環”のきっかけ

地域でのイベントでは、子どもたちの演奏や発表には一切出演料を求めません
その代わりに、マルシェ出店者や大人の出演者から支援をいただき、会場費などの経費に充てています

また、イベント自体もただの発表の場ではなく、

  • ワークショップ(楽器体験・手作り体験など)
  • 地元事業者との連携による出店ブース
  • チラシやSNSによる地域への広報

などを通じて、活動と地域が“ゆるやかにつながる”設計を意識しています。


補助金や制度もフル活用。ノウハウは共有します

会場費・保険・楽器修理費・人材謝金など、文化活動の運営には目に見えない支出が多く発生します。

私たちは市町村や民間財団の各種補助金制度を積極的に活用し、各家庭の負担が最小限になるよう努めています
こうした助成申請や報告書類の作成、予算の立て方なども、これまでの経験をもとに各団体と共有しています。

こうした実務的なノウハウの提供も、私たちNPOの強みです。


「持ち出し頼み」にしない仕組みづくりへ

最後に、私たちが一番大切にしているのは、運営者の善意やボランティア精神だけに頼らないことです。

活動初期にはどうしても“持ち出し”が発生しがちですが、長く続けるためには、資金にも人にも「余裕」が必要です。

だからこそ私たちは、

  • 活動資金にゆとりを持たせる仕組み
  • 関わる人が“無理なく続けられる”役割分担

などを通じて、「気持ち」で続けるのではなく、「仕組み」で支え合う活動を目指しています。


6回の連載を終えて

この連載では、こどもゆめひろばが実践してきた地域での文化活動展開について、実例を交えながらご紹介してきました。

制度が変わっても、子どもたちが夢中になれる場所を残したい。
「やりたい」という地域の想いに、できるだけ丁寧に寄り添いたい。

そんな想いで私たちは活動を続けています。

この連載が、地域や行政で文化活動の場づくりを考えておられる方々の、一つのヒントや勇気になれば幸いです。
そして「うちの地域でも始めてみたい」と思った方は、どうぞお気軽にご相談ください。
小さな一歩を、一緒に考えていけたら嬉しいです。

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